美味しさと健康
よく言われることですが、「食」という字は「人」を「良」くするという字の組み合わせでできており、健全な食事を摂ることが健康な心体を形作るという事で言うまでもなく大事な行為です。
さて味については好みがあります。
多くの場面では甘いものが好きとなるのでしょうが、甘すぎるものは敬遠される傾向にあります。後者については特に体重の変化とともに理解されることが多く、これ以上摂取エネルギーを必要としないため敬遠されるのでしょうが、甘さ、つまりここでは糖分を好むことは先天的に組み込まれたものであるため、なかなかコントロールすることができない現実があります。赤ちゃんが甘いものを口にしたときに自然とニコッと笑みがでるのはまさに先天的に備わった本能的な「人を良くする」糖質獲得システムです。
同様に肉食などを特に成長期に好むのは、それにより得られる栄養素、主にはタンパク質、そしてその構成要素であるアミノ酸がカラダづくりとあらゆる生体反応に欠かせないものだからだと考えられます。例えば免疫反応で重要な抗体もタンパク質ですが、特異的な抗原に対してそれを防御する専用の抗体を20種類ものアミノ酸を組合わせて作り出します。したがってその構成要素であるアミノ酸を外部からタンパク質の形で食物から摂り込むことが必要で、それが足りない場合には内部貯蓄の肉体(筋肉)から預金を引き落として対応することとなります。いわば24時間稼働のATMとなるわけですが、やはり日々の入金が必要で、これが食事に相当すると言えそうです。やはりこれを「旨い」と感じるのは「人を良くする」タンパク質獲得システムだからでしょう。
「美味」という当て字もあります。「美」という字は「羊」が「大きい」と書きますが、近年日本でも根付いてきた羊肉は良質のタンパク質が含まれ食べると元気になると言われます。(少なくとも私の友人の中国人が住む中国西部の地域ではそう言っています)
肉食とともに、そこに含まれる脂肪分をおいしく感じるのは、やはり同様にそこから肉体に必要な「人を良くする」栄養素の脂質を摂り込む必要があるからだと考えられます。
これらのタンパク質、脂質、糖質を三大栄養素と呼び最重視されるのは「人を良くする」食事の大切な要素だからです。
三大栄養素にビタミンとミネラルを加えて五大栄養素と呼ばれますが、三大栄養素に比べるとビタミンやミネラルなどの微量の必須栄養素を摂り込んでもおいしいとは感じにくいのではないでしょうか?
そのため、これら必須のビタミンやミネラルを自然と摂り込むために、単調に陥ることなく多種多様な食材を摂り込むことが考案されてきた、もしくはそのような食生活だけが淘汰されずに残ってきたと思われます。このあたりは伝統的に受け継がれてきた習慣ですが、いくぶん後天的な感じがします。
「人を良くする」はずの糖分を抑制するのも、摂り過ぎが問題視されるからです。脂肪の「脂」という字は「月(にくづき)=肉」(肉の内側の2つの「人」部を平らに均すと月になると気付いたのは30歳を過ぎてからでした。。)の「旨」い部分と書き、確かに「人を良くする」はずの脂肪分の摂取を抑制するための注意喚起をしているように感じられます。
このように(先天的に備わったおいしさを感じる=カラダを作り上げる)ことを察知するシステムに、徐々に変化が伴い、(後天的なおいしさを感じるシステム=健康に寄与する)が人それぞれに作り上げられているという一面がありそうです。
先の羊肉のケースでは、日本にあまり根付いていなかった羊肉がさまざまな場面で試しに食され(例えばカルニチンが多いので推奨されるなど)、初めは独特のニオイや味で敬遠した人も、ここから何らかのカラダ・健康の変化を脳が覚えていて次第に舌・口内で美味しさを感じるように後天的に仕上がってきている可能性があります。
幼少期にとても食べられない辛い食べ物も、ある時から大好物になることが多くありますが、カプサイシンを例としてやはりカラダに寄与する部分が背景に考えられます。
アジア料理でいうと長粒種米やパクチー、北欧のライ麦パン、最近増えてきた全粒小麦粉や玄米、雑穀なんかも然りで同じと思われます。
初めてビールを飲んだとき、日本酒を飲んだとき、それぞれ違和感を覚えましたが、いまや体内にアルコールを迎えることを舌が喜んでいます。(アルコールがカラダに良いものか、人に良いものか、ここではちょっとだけ横において下さい)
そういえばポカリスエットやカロリーメイトも発売された当初はあまり味は高評価じゃなかったのでは。。。?
さて、コーヒーについて。最近はホームコーヒーも自分で焙煎したりして楽しんでいる私ですが、やはり子供の頃はミルク入りのものしか飲めなかったなぁと思い出しました。これは典型的な後天的に美味しく感じるジャンルのもののようです。
その後天的な観点からしても、インスタントコーヒーはあまり飲むものではなかったのですが、チャーガとヤマブシタケを配合したFuji Organicsのマッシュルームコーヒー”Brain Coffee”は今飲むたびに「結構おいしいかな」と感じています。最初の印象とも異なっているように思います。なぜでしょう?